今さらですが、太田光さんによる小説「マボロシの鳥」を読みましたので、ネタバレなしで感想を書きたいと思います。
内容に入る前に、ちょっと装丁について。
今までほとんど小説もまともに読んではない私がなぜかこの本には、興味をそそられました。
それはなんといっても、装丁が素晴らしかったからです。
タイトルから想像する限り、鳥がデザインとして採用されるだろうと思いますが、ナイフが表紙となっています。
物語を読めば、なぜ鳥ではなかったのかというのも大方想像はつくかと思いますが、だからといってナイフを採用するかといったらそれは、難しいところだと思います。
もしかすると注文があってデザインされたのかもしれませんが、このナイフのデザインは素晴らしいです。
そして、タイトルのデザインも素晴らしいです。
物語の持つ雰囲気が見事に表現されていると個人的には思いました。
さて、内容についてですが「面白かった」というのが率直な感想です。
amazonでレビューを見ると、批判的な意見も見られましたが、私の考えではそれはたぶん、太田さんに求める小説像と違ったからではないかと思ったりしました。
小説は、9つの短編から出来ていますが、最初の「荊(いばら)の姫」という物語を読んだときに「これは面白い」と確信しました。
思想小説?かと個人的には思っていますが、最近は(小説はどうかわかりませんが)漫画など見ても、あまり昔のような思想の詰まった作品は見られなくなりました。
漫画はあくまで娯楽だと思われているのか、思想を取り入れようとすると鬱陶しく思われるような傾向にあると思います。
漫画でなくても、最近は軽い作品が好まれる傾向にあると思います。
太田さんはそこに挑戦し、童話のような語りを用いて思想を織り交ぜることに成功しています。
ここが太田さんの巧みなところだと思います。
童話のような語りのためか不思議と思想の詰まった作品の持つ重さが軽減されているんです。
ただ、全体的にものすごく補足というか説明をされているためか、読み手に想像する余地がなくなっているように思いました。
意図してやっているのかもしれませんがもう少し、読者を信用して突き放してもいいのではと思います。
まぁ、百聞は一見にしかずです。
レビュー(私のを含め)で決めつけるのではなく、手に取って確かめてみることをオススメします。
コメントをお書きください