沓澤龍一郎という衝撃

 どうもこんにちは。

 

前回に引き続き、今回も私の好きな絵描きさんを紹介したいと思います。

 

今回は、沓澤龍一郎(くつざわ りゅういちろう)さんです。

 

 

「沓澤龍一郎」という名前を聞いて、ピンッ!とくる方が一体どれだけいるのだろうか?

 

圧倒的な画力で、濃厚な漫画・イラストを描かれる方なのですが、残念なことに2005年?以降、一線からは退かれているようです。

 

 

沓澤さんの主な仕事を紹介すると、、、

 

・「コミックバーズ」にて、漫画連載

・「S.M.H.」や「D.D.D.」といった造形?雑誌に不定期で読み切り漫画・イラスト掲載

・「フロントミッション・オルタナティブ」のキャラクターデザイン

 

他にも色々とやられていますが、割愛させて頂きます。

 

さて、上にあげた「コミックバーズ」での連載は97~98年の間、四回登場するもその後、続きを見ることはできず、、、

「S.M.H.」(95~2000)、「D.D.D.」(99~2002)と、共にすでに廃刊となっており、コミックバーズ同様、入手困難、、、

 

 

沓澤さんの作品で一番新しいものは2005年に発刊された「JAPON」と「Slip ''S'' MANGA collection」で、どちらもオムニバス形式の短編集ですが、これらであれば比較的入手しやすいかと思います。

 

 

とにかく、沓澤さんの作品を見るのは非常に困難だということはご理解いただけたかと思います汗

 

 

「いいから早く画像を!!」という声が聞こえてきそうなので、google画像検索のURLを張っておきます。

https://www.google.com/search?hl=ja&q=%E6%B2%93%E6%BE%A4%E9%BE%8D%E4%B8%80%E9%83%8E&bav=on.2,or.r_gc.r_pw.r_qf.&biw=1162&bih=765&wrapid=tlif134889111408610&um=1&ie=UTF-8&tbm=isch&source=og&sa=N&tab=wi&ei=7nFmUOjnNq2ziQfrqYHYDw 

 

 

 

貼っておいてなんですが、やはりあまり出てこないようですね汗

(出来ることなら、私の持っている本から画像をいくつか載せたいところですが、画像検索で勘弁してください汗)

 

前回同様、絵を提示して語れないのが非常に残念ですが、構わず書かせてもらいます笑

 

 

 

 

沓澤さんの作品のことを知らない人や、google検索でもピンとこなかった人のために言葉で説明すると、、

 

絵的にはSF要素が強いですが、内容はそれとは打って変わって素っ頓狂で、どこか文学的なにおいのする作品です。

沓澤作品は総じて、緻密で、濃厚で、マニアックで、非常にアクの強い作品です笑

 

 

 

 

 

私が初めて、沓澤さんの作品を見たのは「コミッカーズ」(2000年春号)というイラスト雑誌で、

そこには「キッコーマンシティ」なる緻密な建築のイラストが掲載されていたのですが、この頃の私は、一枚絵を見ても、名前を控えたり、検索するほどの探究心はありませんでしたので、

「おぉスゲェ!」としばらく眺めると、次のページへと向かっていました。

 

 

その後、沓澤さんの名前と作品が一致するきっかけとなったのは、先にも書いた「Slip ''S'' MANGA collection」で、この時は田中達之さんの作品を見るために購入したので、沓澤さんの存在にはピンときていませんでした。

 

読み進めていくと、恐ろしいぐらいに描きこまれた濃厚・緻密なモノクロ鉛筆漫画が現れてきました。

ありえないであろう建築群、機械は、あまりにリアルに描かれているために「もしかして存在するのでは?」と思わせてしまうぐらいの存在感。

登場人物も皆、個性的で、特に顔・表情が巧みに描かれています。

 

「なんじゃこの超絶クオリティはっ!!!!」

 

まさに沓澤龍一郎という衝撃。

 

 

 

絵を描く人であれば、よく分かるかと思いますが、人間の顔など描く際、整った顔を描くのは簡単なのです。

 

人体ならば6・7頭身であれば、整った人体になるように、顔にも同じような比率のようなものがあります。

目・鼻・口等のパーツを輪郭の中にバランスよく配置していけば、整った顔になるのです。

 

ところが、癖のある顔や表情を描くとなると、非常に難しくなります。

 

目・鼻・口等のパーツを整っているところから微妙にずらしたり、パーツ自体の大きさを変えてみたりして顔を作っていくわけですが、これは一つ間違えると、観る側に「ヘタクソ!」と思われる可能性があるからです。

 

ですから、描く側としては癖のある顔を描くのは非常に難しいのですが、沓澤さんの作品に登場する人物たちは皆、個性的で愛嬌があり、観る側に「たまにいるな、こういう顔(表情)の人!」と思わせてくれるのです。

 

 

 

 

もう一つ。

 

沓澤さんの衝撃を受けたものとして「コミッカーズ」(1999年夏号)の表紙があります。 

 

 

前回、絵を勉強し始めると「自分のスタイル」を探し始める、というようなことを書きました。

 

私の頭の中には、漠然と理想としていたイメージはありながらも、実現できずに悶々としていた頃。

メビウスさんの作品に出会い、そこでは私の理想の遥か上の次元の世界が描かれていた、というようなことを書きました。

 

 

その時に「それじゃ自分はどこへ向かえば?」と考えたときに「機械的世界ならどうだろう?」と思いましたが、こちらの方向にも大友克洋さんをはじめ、多くの先人がいます。

(もちろん、メビウスさんもSF作家ですから機械的世界を描かせても超絶ですが、大友克洋さんや田中達之さんのような重量感があり荒々しい機械的世界感とは違い、ライトな印象です。)

 

 

そこで私が考えたのが「機械に"見えなくもない"造形」というものでした。

 

機械と異次元的な要素を組み合わせたものと言うべきか。。。

 

言葉で説明するのが非常に難しいのですが「突き抜けないとダメだ!」と、思ってアレコレ描いてみるのですが、これまたろくに絵が描けるわけでも無いのに大それたイメージだけを持っていても、当然描けるわけなく、それどころか「機械どころか何も描けねぇ。。。」と悶々するのでした。。。

 

 

 

さて、話をコミッカーズの表紙に戻しますが、この表紙を見てショックを受けた人は案外多くいるのではないでしょうか??

 

「画像検索しても出てこない!」という方のために軽く説明しますと、この表紙は、機械のコスチュームを纏ったアジア人男性のポートレイト調のイラストです。

 

この男性が纏っている機械のコスチュームの質感が何とも言えないのです。

 

機械のようなのですが、材質はゴムのようです。

 

SFでよくみかけるようなスキンスーツとも異なります。

 

 

まさに「機械に"見えなくもない"造形」がそこに描かれていたのです。

 

いやはや、どこにでも先人はいるものだと思い知らされました。。

 

 

沓澤さんの作品に限ったことではありませんが、優れた絵を観ていると何やら音が聴こえてきそうな感覚に襲われることがあります。

 

私と絵の間に、作者の手が現れて、その絵が出来上がっていくのを観ているような感じというか、

筆跡が音になって聴こえてくるような感じがするのです。

 

沓澤さんの場合は、彫刻刀で細かく刻んでいくような調子で描かれている感じで、音としては「チクチク……」と表現するのが一番近いかと思います。

 

 

 

 

先にもあげました「JAPON」や「Slip ''S'' MANGA collection」というような「絵」に特化したオムニバス形式の本は、最近では残念ながら見られなくなりました。

 

売れないと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、個人的には人目に触れる機会が無いだけで上手く宣伝すれば、それなりに需要はあるのではないかなと思っているのですが、、、

 

 

漫画において「リアルな顔つきにしてしまうと、読者がキャラクターの見分けが出来ない」として、日本の漫画に登場する人物はそのほとんどが記号的なものとして描かれています。

 

そうは言っても、髪型や、服装、口調を変えれば違いはでるのでは?と個人的には思うのですが。。。

 

そもそも、キャラクターの見分けが出来ないと言っている人は全体のどれくらいなのか?

案外少ないのでは?とも思うのです。。。

 

 

 

絵にも楽しみの比重を置いている身としては、どの漫画をとっても記号的な絵を見せられると、正直うんざりしてしまいます。。。

 

「記号的に描け!」というルールに従順に従って描かれているようで、またそれが足かせになっているような気もします。

 

 

最近、フランスなど海外のマンガが日本で見られるようになってきましたが、それらの作品は皆、

個性に溢れていて、勢いのある作品ばかりで観ていて非常に面白いです。

 

リアル調の作品も多いですが、登場する人物で見分けがつかなかったことは、私は一度もありません。

 

 

日本も、そろそろ記号絵から脱却してもよいのではないかな?と思うのですが、皆さんはいかが思いますでしょうか?

 

 

 

話が飛んでしまいましたが、「沓澤さん、何か作品を世に出してください!」という切なる思いを込めて、終わらせていただきます。

 

 

 

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